突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「帰ったのか。声も掛けずになんだいきなり、驚いただろ」

「驚いたのはこっちです。連絡もなく、突然なんなんですか」

 長いまつ毛を上下させていた彼の正面に膝をついて座り、机に身を乗り出して不服をあらわにした眼差しを向けたが、彼はすぐに眉根を寄せてわざとらしくため息をついた。

「連絡するにも、番号も交換してないだろ」

「……そうですけど。自宅にでも電話してくださいよ。そうすれば、こんなに待たずに済んだんですから。それとも、常務って聞いてましたけどひまなんですか?」

「そんなわけないだろ。やっと時間ができたから来たんだ。いいからいつまでも突っかかってないで、早く荷物をまとめろ」

 彼の言葉に、眉を上げる。

「荷物? まさか、今から引っ越しする気!?」

「そのまさかだ。次いつ時間ができるかわからないからな。先日電話して、ご家族の許可も得てる」

「私の許可を得てくださいよ! そんな急に言われても、準備なんてまったく……」

 どうせ祖父だ。楽しんでるのか知らないけど、こんなに大事なこと知ってたなら教えてくれないと困るよ……。

 項垂れて肩を落とした。
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