突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
 明日になったら、正式に皆の前で婚約と会社の業務提携が発表される。それなのに、それが数時間後に迫る今でさえも、自分が創と結婚するなんて実感がなかった。

 最初はなんとしてもこの結婚を阻止したいと思っていたけど、今は――。

「眠いの?」

 このまま眠ってしまいそうな彼に声を掛けた。少し唸り声を上げた彼が、覆い被さるようにして抱き着いてくる。

「いいや。ただ、お前いい匂いがして落ち着く」

「そ、創も同じ匂いでしょ?」

 首もとに顔をうずめられ、私は全身を硬直させた。

「全然違う。甘い。このまま食べれそう」

 吐息が擽ったい。いたたまれずに身を捩らせていると、温かな感触が首筋に落とされた。同時に小さな水音が鳴って、反射的にカッと頬に熱が上る。

「はっ!!」

 恥ずかしさに耐え切れず、調子外れの声が出た。異変を感じた彼が、訝しげな表情でこちらを覗き込んでくる。
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