突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「はっ?」

「は、早く寝ないと! 明日は、朝も早いんだから……」

 言葉は尻すぼみになった。数回瞬きをした彼が、勢い良く噴き出す。

 また、馬鹿にして……。創がいきなりあんなことをしてくるからじゃない。

 唇を突き出し、眉を顰めた。しかし、どうしようもなく気恥ずかしくて、力を緩めた彼の腕から抜け出した。

「そろそろ寝るか」

 立ち上がり、未だ笑みを噛み殺している彼が言う。

「私、眠れそうにないから、眠くなるように本でも読もうかな。創、なにかおもしろい本貸してくれる?」

 まだ頬は熱かった。顔を見られたくなくて、背を向けてつぶやく。

「あぁ、書斎にあるから、好きなのを持っていけ」

 うなずき、書斎のドアを開けて中へ入った。電気をつけ、足を進める。

「あ、やっぱ待て!」

 ドアの外から彼の大きな声が聞こえた。
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