死神メルの大事件

 再び夜がやってきた
 毎日見る顔は息子の嫁の不機嫌な顔
 事務的に配膳され、体を拭かれ、汚物を処理すると逃げるようにいなくなる
 息子の顔はもう何ヵ月も見ていない――厳しく育てたつもりだった
 誰にも負けないようにと勉学もスポーツも全面的にバックアップしてきたつもりだった

 ――その見返りがこれか
 涙など当に枯れ果てた。今は一刻も早くこの無間地獄から解放されたかった
 自殺する事も出来なければ、殺してくれと頼む事も出来ない
 一体、後何年こうして生きなければならないのか……考えれば考える程に死に対する憧れにも似た感情が胸を締め付けていた

「お困りのようですねぇ」
 不意に聞こえる声――男とも女とも思える不思議な声が突如として、部屋中に響き渡ってきた
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