死神メルの大事件
「……本当に?」
って、おいおい。そんなんで簡単に騙されるな!
「お父さんが嘘ついた事あったかい?」
「……ない」
てか、嘘つく程に聡坊と会話した事すらないじゃねぇか。かぁー、なんで分からねぇかなぁ……
「よし、じゃあご飯にするか。おいで」
「パパ……」
「ん?」
「マサオ、飼っても良いよね?何も悪い事してないもん」
……ちっ、ガキのくせに余計な気ぃ使うんじゃねぇよ。
「そうだな、そうなるようにお父さんからも頼んでみるよ」
「本当に!?」
「勿論だ」
「やったぁ!パパ、ありがとう!」
無邪気に喜ぶ聡坊に視線を合わせず、俺の方を見る親父――俺はこの視線を持つ人間をよく知っている。
小狡く、平気で人を欺く事が出来る人間の目……近しい日、俺は必ず捨てられるだろう。