死神メルの大事件

 しかし腹減ったな。体はあちこち痛むが苦痛より食欲の方が勝ってる辺り、そんなに大変な状態にはなってないようだな。翼は前より動かなくなったが……それも仕方ねぇか。

「お困りのようですねぇ」

 ――!?な……ど、どっから入ってきやがった。いや、扉も窓も開いた様子はなかったし『入ってきた』という表現がそもそもおかしい。
 突然……そう、まるで声だけ瞬間移動してきたような……

「辛いでしょう?苦しいでしょう?憎いでしょう?」

 な、なんだこの声は……体中が怯えている。俺の本能的な部分でこれは危険な存在だと知らせている。

「なんで自分だけこんなに苦しまなきゃいけないのか……」

 ――やめろ

「自分は何もしていないのに。むしろ一人の子供を助けたのに」

 やめろ……やめろ!
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