死神メルの大事件

「マサオぉー」
 聡坊の声が部屋中に響き渡った瞬間、声の主は煙のように飛散した。
 幻聴?――いや、あれが幻でなかった事はバクバク動いている心臓が証明している。
 なんだったんだ、さっきの声は……まるで、まるで……

「ねぇねぇ聞いてよ、お母さんがね?僕がちゃんと面倒見るならマサオを飼っても良いって!」
 今は聡坊の声がどんな物よりも安心する。
 気のせいさ、忘れよう。たかだか声だけに怯えてたなんてどうかしてたんだ。
「マサオは僕が守るからね?早く良くなって、お外でいっぱい遊ぼうね!」

 そう、気のせいさ。
 俺の気持ちをあの声が代弁していたなんて――
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