死神メルの大事件
「マサオ、僕ね?夢があるんだ」
何日目かの夜を迎えた日、重苦しい布団の中で聡坊が一度だけ俺に話してくれた夢……
「パイロットになって色んな国に行くの。それでね?へへ……」
あの時の聡坊の目はどんな宝石よりもキラキラ輝いてた。
「横にマサオを乗せて、一緒に雲の上から沢山の国を見るんだ!ね?いいでしょ?」
正直悪くねぇ……って思ったよ。
雲の上から見下ろす烏――粋なモンじゃねぇか。烏界で……いや、世界で最初に国を見下ろした烏ってのも悪くねぇ。
「だから、だからさ……ずっと一緒にいようね?僕達、友達だもんね」
聡坊の腕が俺の体を抱き締めた――傷に指が引っ掛かって痛かったが我慢した。
それよりも聡坊の温もりの方が居心地良かったからだ。