死神メルの大事件

 俺が聡坊のとこに厄介になって半年が過ぎようとしていた。
 傷も大分良くなり、前程とはいかねぇが飛べるようにはなっていた。全てが良い風向きだと思ってた。
 だが――

「聡ちゃん!?どうしたの、その傷は!」
 ヒス女の声が更に高くなり、ベランダに居た俺にも聞こえてきた。
 急いで降りた。
 そこで見た聡坊の姿は――

「だ、大丈夫だよ。ちょっと転んだだけ」
 どんなに馬鹿な奴でもそれが嘘だという事ぐらいすぐに分かる。
 髪をめちゃくちゃに切られ、顔も服も泥だらけ……おまけに三日前に買って貰った靴もなくなり、靴下のまま帰ってきている。
 転んだだけでこんな風になる訳がない。こんなのは俺でも分かる。

 ――イジメだ。
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