死神メルの大事件
突如皿の砕け散る音が聞こえた。それも一枚や二枚ではない。耳を覆いたくなる程の凄まじい音が聡達の鼓膜を痙攣させていた。
「な、なんだ!?」
硝子コップが割れ、作りかけのカレーがフローリングに飛散した。
ガーガーと鳴く声で、誰がこんな事をしているのか一目瞭然だった。
「マサオ!?こ、こら止めなさい!」
止めにかかる父親の腕をつつき、怯んだ所で頭の上に乗り、電球を破壊した。
聡の驚いた顔がマサオの視界に入った瞬間、部屋の灯りが消えた。
「……あばよ、聡坊。楽しかったぜ」
届くはずのない言葉を聡に告げ、編戸をぶち破り、マサオは満月の光に照らされる事なく夜の街へと消えて行った――