死神メルの大事件
季節は春だというのに、今日はやけに日差しが肌を照り付けてゆく。
夕方になれば少しはそれも和らぐかと思いきや、ほとんど嫌がらせのように日中と変わらない暑さが典子の行動を鈍らせてゆく。
「……嫌だわ」
洗濯物が乾いた事についてはありがたかったが、肌が痛むのではないか……という不安から、いつもより早く洗濯物を籠へと放り込んでゆく
手前から順に取り入れ、残りは自身の下着と息子のシャツのみとなっていた。
「聡ちゃん……遅いわね」
戦隊物の絵柄がついたシャツを見、いつもよりも遅い息子の帰宅にリビングの時計へと視線を移した。
午後5時10分――いつもならとっくに帰ってくる時間であり、大好物の林檎を頬張っている時間だった。