死神メルの大事件

 最近は奇妙な事件が多い。聡はまだ小学生ではあったがやはり携帯を持たせるべきだったか――そう考えながら聡のシャツを取り入れようとすると……

「え……」
 突如上空から黒い物体が舞い降り、その足でシャツを奪い取り、羽を小刻みに動かしながらこちらを見ていた。
「……マサオ?」

 不意に蘇る半年前の記憶を無理矢理押さえ付け、マサオの方へと手をかざした。
「何?嫌がらせのつもりなの?ほら、返しな――」
 そんな典子の言葉を無視するかのようにマサオはあさっての方向へと飛びさってゆく。ガーガーという不快極まりない声を叫びながら――

「あ、ちょっと!……もうっ!」
 あれはマサオのお気に入りのシャツ――無くなったとなれば泣くだけではすまなくなる。
 典子は深い溜息を吐きながらマサオを追いかけた。
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