死神メルの大事件
横皺の深い瞼を一層しかめながら、パソコンの画面を食い入るように見つめ、覚束ない指先で一文字一文字を入力してゆく。
「お疲れみたいですね」
無糖コーヒーを手渡し、眉間を指でマッサージする田中を見て、苦笑いを浮かべた。
「岸本か……ありがとう。どうもパソコンってのは俺の性格には向いてないみたいだ」
プルタブを押し、一息で半分の量のコーヒーを飲みながら盛大な溜息をついた。
「しばらくしたら慣れますよ。事件の方はどうですか?」
作成中の報告書を見ると、ほんの三行程しか書かれていない。これではどんな優秀な探偵でも推理する事は難しい。
「まぁ、殺人って訳じゃあなさそうだがな……」
「でも、その様子では納得出来てないみたいですね」
田中はキャメルを口に加え、席を立った。
「ちょいと一服がてら付き合え」