真実さんと正義くん(おまけ話更新中)
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「くーたーばーれーぇええええ!!!」


清閑な住宅街を叫びながら自転車で颯爽と駆け抜ける女が一人。

「なんなの!ほんとマジでアイツ!!」

怒りに任せてペダルを漕いでいたせいか、通常30分かかる職場から自宅への帰路が10分足らずで着いてしまった。

「ヤバっ、自己新記録出しちゃったよ」

嬉しいというより、いい大人が何してるんだ…と、女こと大内真実<おおうち まみ>は己に若干引きつつ玄関を開けた。
空腹を刺激する夕飯の匂いが鼻孔をくすぐる。
しかし、まずはお風呂に入って気分をリフレッシュしたい。

「ただいまー!ねぇお母さんお風呂入れるー?」

キッチンに居るであろう母親に聞こえるように叫びながら靴を脱いでいると、予想もしなかった声が頭上から聞こえてきた。

「おかえり」

その声に驚いて顔を上げれば、目の前に居たのは就職して県外へ引っ越してしまった幼馴染み兼恋人の神野藤正義<かんのとう まさよし>の姿だった。


「あ、れ?幻覚と幻聴が…とうとう疲労もピークになってきたのかな」

「お前、何言ってんの?」

状況がうまく飲み込めずにブツブツ言ってる真実に正義は笑っている。

「ほら、おいで」

差し出された手とトレードマークといえる爽やかな笑顔をまじまじと見て、目の前の人物が幻覚じゃないと分かってきた真実は驚きのあまり数歩後ずさった。

「ままま正義!?…え、なにしてんの?」

「今日こっちに出張だったんだ」

「ああ、そうなんだ…って、いやいやいや、そうじゃなくて!なんで…」

この家にいるのかと言いかけた時、グイッと腕を引かれ久々に正義の匂いと体温に包まれる。

「会いたかった」

耳元でそう呟かれた真実はドキドキしながら小さく頷くと正義の背に腕を回した。

「真実ちゃーん?正ちゃーん?」

しばらく抱き合っていると、母親の呼ぶ声が聞こえてきて真実は急いで正義から離れながら前髪を直す。
いくら付き合ってることを知っているとはいえ、さすがに気まずいし恥ずかしい。

「取り敢えず中に入れよ」

玄関に置いていた荷物をさり気なく持って奥に向かう正義の後ろ姿に、親に見られた訳でも無いのに恥ずかしいのを誤魔化したい真実は叫んだ。


「だから!ここあたしんち!」

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