真実さんと正義くん(おまけ話更新中)
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リビングからキッチンを覗けば、母親がせっせっと夕飯の準備をしていた。
「おかえり真実ちゃん、夕飯もうちょっと待っててねー!」
「急がなくていいよ。先にお風呂行ってくるし…ってか、今日の夕飯なんか手込んでない?」
スープにサラダ、肉料理もあれば魚もあり普段では考えられない料理の品数だ。
「だって若い男にご飯作るのなんて久々なんだもの~お母さん張り切っちゃうわ〜!」
「いやいや、張り切らなくてもいいから。そもそも自分ちに帰りなさいよ、目の前じゃん!」
ソファーですっかりくつろぎ、テレビを見ていた正義にそう投げかけた。
「一応、帰ったんだって。でも誰もいなくてさ~腹減ったし真実んち来ちゃった」
「あ、そういえばおばさんたち今日から日曜まで出かけるって言ってたよーな…」
「それそれ!おばちゃんに聞いて初めて知ったんだ。そういう事はさ、離れて暮らしてても連絡しろよって思うだろ?」
「そりゃそうだけど…でも、うちはレストランじゃなんいですけど!」
「やぁねぇ~!久々に会えたのに素っ気ない事言っちゃって」
真実と正義のやり取りを聞いていた母親はそう言ってクスクス笑っている。
「素っ気なくなんかないわよ…実物に会うのは久々だけどメールや電話で連絡は取りあってるし、別に普通よ」
「いいのいいの、気にしないでおばちゃん!俺、この扱いに慣れてるから」
「んもう!慣れちゃダメよ!ダメ!真実ちゃんはもっと正ちゃんを大事にするべきよ。こーんなにイケメンの正ちゃんが美女じゃなくて、親の贔屓目に見ても平均的な真実ちゃんと付き合ってくれるなんてギネス認定もんなんだからねっ!」
ビシッと音が聞こえてきそうなほど、勢いよく菜箸を真顔で向けてきた母親に真実は心の中で突っ込んだ。
お母さん。
その発言、娘を貶してるのは分かるんですけど彼氏の正義は貶してるんですか?褒めてるんですか?と。
「この際だから言うけど、真実ちゃんはー…」
「あーもう!お風呂行ってくる!」
その様子をニヤニヤしながら見ている正義にベェーっと舌を出し、真実はお風呂へと逃げ出した。