真実さんと正義くん(おまけ話更新中)
5
仕事を辞める。
その言葉に思わず真実の顔が強ばった。
「真実の仕事を否定してるんじゃないよ。俺がこっちに居たままなら辞めろなんて言わなかったし。でも、ごめん。まだ戻れない」
「ううん、謝らないで。正義が仕事楽しんでるの知ってるから。ただちょっと頭がついて行かなくて…」
「転勤する前は遠距離でも平気だって思ってた。俺らそんな事で駄目になるような関係じゃないだろ?」
「うん」
「だけど、お互い忙しくなって全く会えない事も多いし、やっぱ疲れてる時や参ってる時は傍にいてやりたい。もちろん、俺の傍にもいて欲しい」
「うん」
いつも2人で居る時のような自信満々な口調ではなく、穏やかに話していく正義に自分も同じ気持ちだと、そう言いたいのに言葉が口から出ていかない。
それがもどかしくていつの間にか膝の上できつく握っていた真実の拳を正義が優しく包み込んだ。
その温かさに鼻の奥がツンとして、真実は慌てて天井を見上げる。
「生まれた時から一緒で恋人になって10年、喧嘩もしたし泣かせた事もあったけど俺の気持ちは変わってないよ。これからもずっと一緒に生きていきたいんだ。真実、俺を見て」
正義が握っていた手に力を入れたのを感じ、涙が零れないようにずっと視線を上に向けていた真実が正義へ視線を戻した。
「愛してる、結婚しよ」
「―――ッ!」
我慢していた涙が頬を伝っていく。
その涙をすくってくれる正義の優しい手つきに、止まるどころか涙はとめどなく溢れてくる。
「一応、確認なんだけど嬉し涙だよな?」
「ば、ばか!当たり前じゃん!!」
「良かった」
そう言うなり抱きしめてきた正義の背中に腕を回し、真実も力いっぱい抱きしめた。
「あ~!俺んちに連れて行けば良かったー」
「なんで?」
やや母親に押し切られる形になったとはいえ、こっちに泊まる事にしたのは自分じゃないかと真実が上目遣いで正義を見ると、その視線に気付いた正義はニヤリと笑い真実の耳元で囁いた。
「だってお前、ここでヤるの嫌だろ?」
ダイレクトに響いてきたセリフに、真実の顔が見る見るうちに赤くなっていく。
「ちょ…!」
返事をする前に真実をベットに押し倒すと、反応を楽しむように首筋に軽く吸い付いた。