真実さんと正義くん(おまけ話更新中)
番外編・正義とゆかいな仲間たち

営業事務3年目、川原麻衣。
今年の目標は同期で営業部エース、神野藤正義と付き合うこと!
そ・し・て…寿退社よっっ!!

17時終業ピッタリに女子トイレに駆け込んだ私は鏡の前にメイクポーチを広げた。
皮脂をティッシュオフして、コットンに乳液を垂らしてファンデのヨレを吹きとっていく。

…25になった途端、物凄くテカるし化粧がお昼に直しても夜まで持たないのよねぇ。

コットンに乳液を追加して顔全体に薄くのばして肌を整えてる所に「お疲れ~」と同期の林香織が入ってきた。

「お疲れ~」

「うっわ。今日気合入ってんね…」

「だって同期会だもん」

この日の為に新調したワインレッドのAラインワンピースはウエスト部分で切り替えになっててスカートはふんわり。でも、上はストレッチ素材でピッチリの胸元が深めのVネックで谷間を強調するタイプ。
神野藤くんがおっぱい星人って話は聞かないけど、おっぱい嫌いな男はいないもんね!
今日は特別にパット3枚重ねよ!

上から下まで見たて若干顔の引き攣っている香織と鏡越しに目が合った。

「いや、そうだけどさ~…それで仕事してたの?」

「まさか!神野藤くん以外に見せるおっぱいは持ち合わせていないわ。ちゃーんとカーディガン持参したわよ」

パウダーファンデーションをブラシで顔に軽く伸ばしていると、隣で香織もメイク直しを始めた。
と、言っても私と違って目元とリップを直して終わるみたいだけど。

「ってかさ、神野藤くんが来るの初めて知ったんだけど」

「森口くんがさ、なんか今回は粘ってくれたの!いつもは役に立たないけど今回はいい仕事したわ~」

「へ~珍しい。神野藤くん自分は最初から本社勤務じゃないしって来なかったのにね」

「でっしょ!?チャンスなの!」

「ちゃ、チャンス?」

思わずマスカラ片手に振り向けば、香織が2、3歩後退った。

「先週さ、課長の発案で急遽部署の飲み会だったの。神野藤くんと係長が出張だったんだけど日帰りだから遅れるけど参加するって聞いてて」

「あ~行ってたね、経理に旅費回って来たわ」

「でね、2人で行くbarもそこから近いホテルもリサーチして待ってたのに来たのは係長だけ!森口くんに聞いたら“ああ、神野藤?午後は有給だよ”って!!聞いてないし!」

「待って。なんかおかしな単語あったよね?ホテルってなに」

「神野藤くん、飲みに誘っても合コンに誘っても全然来てくれないし。部署の飲み会なら参加するから、そこで良い感じに持っていきたいけど上司の手前ガツガツいけないでしょ。だから途中まで二次会行って、飲み直したいってbarに誘うの。酔った振りしてホテルで既成事実って流れの準備を2年もしてるのに全くチャンスがないの!でも今回は花金の同期会!邪魔者はいないし、チャンスなのよ!」

「へ、へぇ~」

2年もかわされているなら脈無しなんじゃ…と思ったが香織は恐ろしくて言葉に出来ない。

「うふふふっ。今日こそはお持ち帰りするわよ~!!」

さらに気合を入れ始めた麻衣に香織は心の中で神野藤に同情した。
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