真実さんと正義くん(おまけ話更新中)
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幹事の森口くんが予約したお店は最近出来たばかりの居酒屋さん。
大人数なので座敷なのはいいんだけど…おかしいわ。
私が予想していた展開にならないのは何故なの?
今、本社にいる私達の同期は男女合わせて10人。
うち女子は4人だけど香織以外のメンバーが神野藤くんを狙ってるって話は聞かないし、何より私がずーーーっと狙ってるって知ってるから邪魔はして来ない。
神野藤くんの隣を狙った席は空気を読まない森口くんと野原くんに取られたけど、逆に目の前の席に座れてラッキーって思っていたのに。
おかしい。おかしいわ。
全っっ然、神野藤くんの視線を感じないのは何故なの?
こーんなにおっぱいアピールしてるのに!
森口くんの視線ばっかり来るんですけど!
話しかけたくても男3人楽しそうに仕事の話しちゃってるし!
「ね、ねぇ!神野藤くんが同期会来るのって初めてだよね?」
「そうだね、今回は幹事の森口がしつこくて」
「しつこくねーって!」
私のピリッとした空気を感じたのか隣にいた香織が話を変えてくれた。
さすが香織!!今度ランチ奢るからね!
「次も参加してね、お店選び頑張るから!」
「次の幹事、川原さんなんだ」
「そうなの!だいたい居酒屋だからちょっと変えてみようかな~って思ってるんだぁ」
やった!今日初めて目が合った~!!
ここから巻き返していくんだから!
「ねぇ、かん……」
「あ!!お前、アレどうなったよ!?」
もーりーぐーちー!!!!だからアンタ空気読みなさいよっ!
ああもう!また横向いちゃったじゃない!
「アレって?」
「とぼけんなって。ほら先週の出張」
「ああ、問題ない」
「それって…そういうことだよな!?良かったなー正義!」
「まぁ失敗する確率はゼロに近かったけど」
2人の話の内容が分からないんですけど…。
私だけじゃなくて、香織も野原くんも分からないみたいで首をかしげている。
「ねぇねぇ、何の話してるの?」
「そうだよ、俺らにも分かるように言ってくれよ」
「いや、そんな大した事じゃないから」
「大した事だろーが!!」
「先週の出張で何かあったの?サポート出来ることならするし!」
「ありがとう、川原さん。でも、仕事の事じゃないから大丈夫」
ああああ~!眩しい!笑顔が眩しいわ神野藤くんっ!
イケメンの笑顔にときめいていると、何故か森口くんがいきなり立ち上がり、そして…とんでもない事を言い放ったの。
「あ~あ~えー同期の皆様、我ら営業部のエース神野藤正義くん。この度、遠距離恋愛中だった彼女と婚約が成立しましたーっ!!!!」
――――――……
「「「えーーーーーー!!!!!!?」」」
「マジかよ!お前いつの間に彼女作ったんだよ!?」
「わぁ~おめでとうー!!」
「彼女の写メないの?みたーい!」
「神野藤、お前もう今日の主役!たっかい酒あけよーぜ!!」
一瞬の静寂の後、その場にいた同期全員が叫び歓声を上げた。
…呆然とする私と、そんな私を横で支える香織以外。
「え、こんにゃく?うちの会社こんにゃく扱ってたっけ?」
「麻衣!落ち着いて、まず深呼吸しよう?ね!?」