夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
(3)
「アカリ」って、無邪気に呼んでくれる優しい声が好き。
目が合うと、微笑んでくれる優しい表情が好き。
ーーでも。
今のバロンは、視線を交えているのにまるで私を見ていないかのように見える。
茫然としている私の前で、バロンはネクタイを緩めて、シャツの1番上のボタンを外して着崩しながらゆっくり立ち上がった。
「……生きて帰れると思うな」
「本気だねぇ、召使いさん。
……嬉しいよ」
振り返ってリーダーの方を向いたバロンが、腕捲りをして指をバキバキと鳴らす。
彼の様子を見て嬉しそうに「ククッ」と笑い声を漏らすリーダー。
その光景に、ゾクッとした。
バロンの背中を見てると、鼓動がドキドキと音を立てるの。
でも、いつもの……。
胸が熱くなるドキドキじゃなくて、私の身体は冷えて震えていく。