夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
雰囲気も、声も、口調も……。
髪の色も、瞳の色も違う。
それなのに、私の心は幼いあの日とよく似た安心感に包まれていた。
そして、同時に浮かび上がる疑問。
貴方は、誰なのーー?
「……負けないよ、僕は。
アカリの元に帰るって、そう約束したからね」
私の心の問い掛けには当然気付かず。
バロンはそう言って自分のネクタイで二の腕の傷を止血すると、ゆっくりリーダーの方に歩いて行く。
黙って彼の背中を見つめるしか出来ない私の前で、ついに対決が始まろうとしていた。
「……へっ。言うねぇ、召使いさん。
その右腕でオレを倒せるのか?」
鼻で笑う自信満々といった感じのリーダー。
バロンはその正面に立ち、にっこりと微笑んで見せる。
「丁度いいハンデじゃない?
あんたなんか、左手さえあれば倒せるよ?」
「っ……なんだとッ」
左手をヒラヒラさせる笑顔のバロンに、リーダーの眼光が鋭くなりこめかみに青筋がはしる。
どうやら彼の言葉と態度が、相手に火をつけたようだ。