夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
第5章 バロンの観察日記
(1)
一夜明けて、翌朝ーー。
今日はモニカ様が帰られる日。
昨夜の疲れでうっかり寝坊してしまった私は、慌てて支度を済ませると外に向かって走った。
玄関の扉を開けて勢い良く飛び出すと、別荘の門に止まった馬車に乗り込もうとするモニカ様の姿が目に映る。
「っ……お待ち下さい!モニカ様ッ!」
「!……アカリ、様?」
呼び掛けに気付いてくれた彼女は馬車の段に掛けていた足を地面に降ろすと、駆け寄る私を驚いた顔で見つめていた。
「はぁ〜っ。よかった、間に合って……。
道中、どうかお気を付けてお帰り下さい」
「えっ?
その為に……わざわざ?」
息を整えながら微笑む私に、少し顔を伏せたモニカ様は複雑そうな表情を浮かべる。
彼女とは色々な事があった。
でも、バロンから聞いたんだ。
私が連れ去られた後、モニカ様がどれだけ必死になってくれたか。
あの後ーー。
置き去りにされたあの場から、モニカ様は自ら別荘に向かって助けを求めてくれた事。
泣きながらバロンに、私を助けてって言ってくれた事。