夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
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「……アカリ様。
やはりまだお疲れが残っているのでは?」
昼食をすませ、午後の勉強タイム。
ローザの心配そうな問い掛けに私はハッとして、いつの間にか問題を解く自分の手が止まっている事に気付いた。
「す、すみません!すぐにやりますっ!」
ローザはこの前の事件での事を心配してくれて、勉強やお稽古事を暫く休むようにすすめてくれたんだけど……。
今私が勉強に集中出来ないのは、事件のせいでも、昼食後にまったりしたいからでも、夏バテによる気怠さではない。
バロンの事だ。
一人で部屋に居ると彼の事ばかり考えて悩んでしまうから、私はローザに無理を言って勉強を頼んだ。
……でも、ダメだ。
全く頭に入ってこない。
「……今日は、ここ迄に致しましょう」
ペンを持つ手が止まってしまった私を見てローザはそう言うと、机に広がった勉強用具を片付け始める。