夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「……。
ごめんなさい」
使用人長という立場で、何かと多忙な彼女を振り回してしまった。
無理を言ったのは自分なのに申し訳なくて、謝罪の言葉を述べて様子を伺うと、こちらを見たローザと視線が重なる。
「……バロンと、何かございましたか?」
「えっ?!」
その質問にドキンッと心臓が一気に跳ね上がった。
ローザの口から出たバロンの名前に過敏に反応してしまい、「えっ?えっ?」と動揺していると、私の反応を見て彼女は珍しく微笑う。
「バロンも、いつもと少し様子が違いましたから。
元々よく食べる方ですが昨日と今日、いつも以上に食事を平らげたと……。厨房の者が驚いておりました」
「えっ?
バ、バロンって……大食い、なんですか?」
信じられない。
いつもお仕事の時に着ている召使い用の制服ー燕尾服ー姿を見る限り、無駄な肉なんて一切ない。