夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
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ついつい張り切り過ぎてしまった。
心を込めて作ろうとした結果。
こうしよう、ああしよう、とアイデアを詰め込んで……。
そんなこんなで、バロンへの差し入れが完成したのはもう夕方だった。
まだまだ騒がしい蝉の鳴き声を聴きながら、ローザの情報を頼りに彼の行きそうな場所を捜す。
休憩室や食事場所など、別荘内にはいなかったからおそらく外の中庭だ。
高い所が好きなバロンは、よく木登りをして読書や昼寝をしているらしいとの情報。
私は中庭に生えている樹木を一本一本見上げて捜す。
しかし、いない。
他に、バロンが好みそうな高い場所は?
木よりも高くて、くつろげそうな場所と言ったら?
ーーそうだ!!
閃いた私は中庭から別荘の上、つまり屋根を見上げた。
!……いたぁ~っ!!
目を凝らして、ようやくバロンらしき姿を発見。
屋根の上で横になっている様子で足元しか見えないが、好き好んであんな高い場所に登る人物なんてまずこの別荘の中では彼だけだろう。