夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

……。
しかし、遠い。

それに寝てるのか動く気配はなく、下から様子を伺う私に気付いてくれる感じもない。
名前を呼んだところでこの蝉の声でうるさい中、声が届くか微妙な高さだし、驚かせてバロンが屋根から落ちても嫌だし……。

「そもそもバロンはどうやって登ったんだろう?」と、別荘の周りを歩きながら上に登れそうな場所を探した。


すると。
上に向かって長々と伸びているハシゴを発見。
鉄で出来ているから丈夫そうではあるが、真っ直ぐ建物の壁沿いに垂直に伸びた長い長いハシゴだ。

バロンの居る屋根までは、15メートル〜20メートルと言ったところだろうか。


ーーいやいやいやいや!無理、無理よ!!

これは高い所が苦手とか、そんな事うんぬんの問題ではない。
高所恐怖症じゃなくても、自らこのハシゴを登る人間の方が稀だと思った。


大体バロンは何であんな場所に居るのよ!
本当に、猫なんじゃないの?!

やるせない気持ちを抱きながら、ハシゴの下で一人ツッコミを入れる私。
< 159 / 475 >

この作品をシェア

pagetop