夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

バロンの見ている世界を、私も一瞬でもいいから見てみたい!

そんな想いを胸に、ただ前だけを見つめて私は必死に登った。


あと少し…。
っ……あと少し!

何度も自分に言い聞かせながら登る事ようやく、屋根の上を見渡せる位置まで、顔がきた。
その位置から見渡すと、横になっているバロンの姿が見える。

彼を見付けてドキンッと弾む鼓動。
それと同時に、私の口から気付いてほしいという欲が溢れた。


「っ……バロン!バ~ロ~ンッ!!」

「!!っ……アカリ?!」

私の呼びかけに、驚いてガバッと身を起こすバロン。

視線が交わって、嬉しくて、嬉しくて……。
「やっと、会えた!」と、歓喜あまった私は、自分の今の状況を完全に忘れてしまった。


気を抜いた一瞬。
突然強い風が吹いて、なびいた自分の長い髪が目をかすめる。


「痛ッ……っ」

チクッとする痛みに怯んで、目元にかかった髪を払おうとした私は……。
うっかりハシゴを掴んでいた手を、放してしまった。
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