夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
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「……。
そろそろ、落ち着いた?」
屋根の上に座って、抱き合っていた私達。
暫くして、手で涙を拭いながらすんっと私が鼻をすすると、バロンが静かに口を開いた。
優しい口調に、ホッとする。
でも、これ以上彼の優しさに甘えて、自分の気持ちを言わないままでいるのは間違いだ。
伝えなきゃ、私の今の気持ちをーー。
「アカリさ、降りる時の事考えてないでしょ?
全く、降りる時のが絶対怖い……」
「ごめんなさいっ!」
バロンの言葉を遮るようにして、私は頭を下げて謝った。
離れたくない。
少しでも長く、傍に居てほしい。
謝罪の言葉の後に、そんな本音を伝えられたらどれ程良いだろう。
けど、上手く言えない。
私達の関係で「好き」なんて言っちゃいけない事も分かってる。
「っ……避けないで?遠くに、行かないでっ?
お願いッ……!!」
だから、これが私の精一杯の気持ち。
今伝えられる、全てだ。
永遠なんて望まないから……。
傍に居られるまで、ギリギリの最後の瞬間まで、貴方と居たいの。