夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
『大切なのは、過去ではなく今。
そして”これから”という未来をどう生きるのか』
そう教えられて、胸が……。
冷え切っていたはずの心が、熱くなる。
不思議。
まるでどこかに行っていた心が、戻ってきたような感覚に包まれていた私。
瞬きも忘れて見つめていると、目線を合わせるように彼が正面に片膝を着いて、私がずっと待ち望んでいた事を言ってくれた。
「……ね?アカリ?」
「っ……」
私の名前を、呼んでくれた。
ここに来てから初めて誰かの口から聞く、自分の名前。
するとその瞬間、私の瞳からは大粒の涙が溢れ頰をつたり落ちた。
暖かい、涙。
この一ヵ月流した、冷たい涙とは違う。
「っ?……どうしたの?アカリ?」
でも、そんな心境を知らない彼は、私の涙を見て驚いた表情を浮かべる。
滲む視野にボヤけて映る彼が、眩しいくらいに綺麗で。名前を呼ぶ声があんまりにも優しい音だから、困らせると分かっていても溢れる涙を私はなかなか止める事が出来なかった。