夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
お嬢様としか呼ばれなくて、自分を見失いかけていた私を、彼は真っ直ぐ見つめながら呼んでくれた。
「っ……もっと、呼んで。
名前、もっとっ……呼んで?」
泣きながら子供のようにせがむ私に、彼は優しく微笑んで頷くとゆっくりと口を開く。
「……アカリ」
「っ……もっと、……」
「アカリ……」
「もっと……っ」
……。
大切にゆっくりと呼ばれる度に、優しい音が私に温もりをくれる。
変なの。指一本触れられていないのに、まるで心が抱き締められているように暖かい。
彼は嫌な顔一つせずに、暫く私の名前を呼び続けてくれた。
……
…………。