夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
つまりここは、ヴァロンとお父さん。
私にとって大切な人達のゆかりの地なんだね。
辿り着いただけで、早くもジーンと胸がいっぱいになる。
しかし。
そんな喜びの気持ちばかりだった私に忠告するように、背後から歩み寄ってきたバロンは自分とお揃いの帽子を深く被せた。
一応、お忍びで来ているから変装用だ。
「ここは各国から、色んな人が集まる港街だからね。
住民になるには審査があるから問題ないけど、旅行客の中には危険人物がいるかも知れないから気を付けて」
「あ!う、うんっ」
バロンの言葉に、ハッと気付かされる。
そうだった。
彼はクスクス笑いながら言ってくれたけど、確かにここは見知らぬ街。
危険が全くないという保証もないのだ。
ゴクッと唾を飲み込み、改めて気を引き締める。
が、その直後。
硬く握り締めようした私の手を、ギュッと温かい大きな手が包み込んだ。