夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

「じゃあ、試してみよっか?
すいませ~ん!これと、これと、これと……」

「!……ちょっ。
一つの店でそんなに頼むの!?」

最初のお店からそこにある全ての商品を注文し始めるバロン。
どうやら彼は、全ての店の全ての商品を食べるつもりらしい。


も、も~っ!
バロンは色気より食い気ですか~!!

デートみたい、と意識していた自分が恥ずかしくて馬鹿みたいではないか。
繋いでいた手も、お金を払うのと商品を持つために放されてしまったし……。

乙女の夢をあっけなくぶち壊されて、すっかり拗ねた私は「もうっ」と心の中で愚痴をこぼした。

……でも。


「!……うまっ!
何コレめちゃくちゃ美味い!!」

子供のように喜ぶ無邪気な声に視線を向けると、そこには嬉しそうな笑顔で本当に美味しそうに食べるバロンの姿。

ズルい!本当にズルい!
あんな表情を見てしまったら、もう怒れない。

それどころか、「まあ、いっか」って。
私も笑顔になってしまった。
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