夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

「っ……クシュンッ!」

「!……」

「……あ、ごめん。
さすがに少し寒くなってきた……」

感動の最中に訪れた終止符は、彼のくしゃみ。
手の甲で軽く押さえながら鼻をすするという、格好良いのに全く飾らないその姿に、さっきとはまた違った雰囲気で和みを感じて私は微笑った。

年齢は20代半ばくらいだろうか?
出逢ったばかりなのに、彼の傍はとても居心地がいい。
本当に不思議な人。

そんな事を思っていると、ゆっくりと立ち上がった彼がクルッと背を向ける。


「!……あ、っ……」

何処かに行っちゃう?
咄嗟にそう思って、寂しいような……。まるで母親に置き去りにされる子供のように、急にまた不安になって、私は思わず彼を追いかけようと立ち上がりかけた。


「あのさ。
……悪いんだけど、向こう向いててくれる?」

「!……え?」

「濡れた服、絞りたいからさ……」

その言葉に、彼の服裾を掴んで止めようとした手が止まる。
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