夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
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「バ、バロン。
お待たせ、先にお風呂ありがとう」
暫くして。
お風呂を済ませた私は寝具に着替えると、ゆっくりと脱衣所から出て来た。
なんだかソワソワする。
湯上り姿なんて何度も見られているが、今日はいつもより落ち着かない。
緊張してついつい長風呂になっていた気もする。
変に意識しているのをバロンに悟られていないか心配だ。
しかし。
ーーあれ?いない?
返事も無ければ、少し歩いて来てソファーを覗き込んでも姿も見当たらない。
「バ、バロン?……どこ?」
いつも傍に居てくれる彼がいない。
不安な気持ちを抑え、部屋を見渡しながら進んで行くと、私は恐る恐る奥の寝室を覗き込んだ。
すると……。
「!っ……え?」
私の目に映ったのは、ベッドで仰向けで寝ているバロンの姿。
う、嘘っ……。
寝てる姿なんて、初めて見た!
いつもは必ず、バロンは私より先に寝たりしない。
私が眠るまで起きてくれていて……。
特にこの旅中は、眠っていない夜もあると思う。