夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
……?
な、何だろう?
握手、な訳もなく。
差し出された手をじっと見つめていた私に、大男が笑いながら言った。
「金だよ、金!
オレ様達は、依頼されなきゃ動かない。
夢の配達人への報酬はあるのかい?お嬢ちゃん」
「!……お、お金?
っ……な、ないです」
大男に言われて、私はそう答えるしかなかった。
そういえば旅の最中、船代も食事代も宿代も……。
「お給料ずっと使ってなかったから、大丈夫!」って、支払いはずっとバロンが払ってくれてた。
私はお金どころか、何も持たずに来ちゃったから……。
改めて考えナシだった自分が恥ずかしくなる。
俯く私に、大男はフッと鼻で笑うと背を向けて再びお酒を飲み始めた。
冷たい背中が、”もう話し掛けるな”と言いたげな雰囲気。
ーーでも、諦めたくなくて……。
ここまで連れて来てくれたバロンの思いも無駄にしたくなくて、私は大男の側に行って深く頭を下げた。