夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
そんなの、無理に決まってる。
ヴァロンは白金バッジになってから、もう十五年以上もそれを守ってる夢の配達人だ。
同じ白金バッジの夢の配達人でも、彼には敵わないって聞いている。
そんな彼から、バッジを奪うなんて並大抵の事ではない。
私は、バロンがこの勝負に負けるなんて思ってない。
……でも。
あまりに無理難題な大男の要求に、動揺したのは確かだった。
観客達の中には「兄ちゃん、そんな無理な要求受けて大丈夫か〜?」なんて、冷やかしの声も聞こえる。
ーーしかし。
「……いいよ」
私の動揺や、観客のザワザワも、一瞬で鎮めるバロンの言葉。
6杯目を飲み干した彼は、平然と言葉を続けて……。私と観客を、更に驚かせる。
「だって、僕がヴァロンだもん」
騒がしかったその場が、一気にシーンと静まり返った。
観客も、大男も……。
私もバロンの言葉に、呼吸をするのも忘れて彼を凝視した。
「これを下剋上にしたら、あんたは僕を倒した事になるから……。一石二鳥じゃん?」
「どうぞ?」と、いう感じでバロンは大男にグラスを差し出す。