夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「ハ、ハッ……!
ハッタリ、だろっ?」
大男は動揺しながらも、6杯目を飲み干してグラスを置く。
そして、バロンの容姿をマジマジと見つめた。
「大体、あんたがヴァロンなら若過ぎる。
奴はもう三十を越えてるハズだからな」
「あれ?知らない?
僕の特技の一つは変装なんだよ?」
大男の指摘に微笑みながら、バロンは7杯目のグラスを空けた。
二人のやり取りに、観客達はヒソヒソ話を始める。
バロンが本当にヴァロンなのか……?
もし、今この場で起こっている飲み比べが、本当にヴァロン絡みの下剋上ならば……。
それを目の前で観ている私達は……。
すごい瞬間を、生で観ている事になるのだ。
私は、今までのバロンを思い返す。
今までの彼との出来事。
何でも熟す、文武両道のバロン。
バロンがもし、本当にヴァロンでも……。
疑う余地は、全くない。