夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「全く、情けないのぅ。
うちの金バッジに勝っておきながら、最後は女の子に心配かけるとは」
「やれやれ」と言いたげな口調でそう言って、私達に歩み寄って来たのは……。
さっき私の隣に居た、おじいさん?
「男なら女の前ではカッコ良く在れ!
近頃の若モンには、なかなか伝わらんのぅ」
目の前でそう言われて茫然とする私におじいさんは微笑むと、小柄な体型からは想像出来ない力で……。
なんと、自力で立てないバロンを担ぎ上げた。
その光景には私も、周りの人達も唖然としておじいさんを凝視する。
う、嘘……でしょ?
まさに、合いた口が塞がらない状況。
ただただ、目を丸くする事しか出来ない私におじいさんはニッと歯を見せて笑う。
「ついて来なされ」
「!……。
あ、のっ……貴方は一体?」
バロンを担ぎ上げたまま足早に歩き始めるおじいさんの後を、私は戸惑ったままの足で必死に追いかけた。