夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「あ、あのっ……私は!
ア、アカリと、申しますっ!」
すっかりポーッとしていた私が、自分も自己紹介しなくては!と、ハッとしてソファーから立ち上がり頭を下げた時だ。
「ほぅ、アカリ……とな?」
ガチャッと扉が開いたかと思うと、優しい声を響かせながら、笑顔のマスターさんが部屋に入ってきた。
正面のソファーに座ったマスターさんは私にも座るように促すと、顔を真っ直ぐに見つめて言う。
「そなた、もしかして……。
ギルバートの娘さん、ではないかのぅ?」
「!……お父さ、……っ。
父を、ご存知なんですか?」
「ああ、知っておるよ。
ギルは夢の配達人の一員じゃったからなぁ」
マスターさんの言葉に胸がドキドキして、声が震えそうだ。
そんな私を落ち着けるかのように、マスターさんは優しくゆっくりと話し出す。
「ここでのギルは、とにかく優しい奴じゃった。
まあ。その優しさが弱点でもあって、仕事の向き不向きが激しかったがの」
緊張で上手く質問出来そうにない私を察してだろう。
マスターさんはお父さんの事を、自ら進んで語ってくれた。