夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
触れたい、な。
無防備な彼の寝顔を見ていたら、愛おしくて……。なんだか甘えたい気持ちが溢れてくる。
私は椅子に座ったまま前屈みになって、バロンに腕枕してもらうように自分の頰をくっ付けてみた。
部屋に香る消毒液の匂いも好きだが、それにバロンの匂いもプラスされて落ち着く。
おまけに、服越しだが大好きな人の体温が伝わってくるのだから尚更だ。
リラックスしてきて、眠気を誘われるような心地良さに、思わず目を閉じたーー。
「……アカリ。
嬉しいけど、僕お酒臭くない?」
「え?……ん~ん。
すごく好きな……。
……。……えっ?」
今、バロンの声が……。
密着していた彼の身体から、直接自分の耳に響くように聞こえてきた声にハッとする。
ゆっくり顔を上げると、いつの間にか起きていたバロンが私を見つめて微笑んでいた。