夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「……そ。
なら、よかったね」
私の笑顔を見たバロンは上半身を起こして、優しく微笑んでくれた。
その表情がとても温かい。
いつも、そう。
私の事なのに、自分の事みたいに喜んでくれて……。必死になってくれる。
「……バロンの、おかげだよ。
連れて来てくれて、本当にありがとう」
吸い込まれそうな綺麗な瞳を見つめながら、私はお礼を言った。
本当に、バロンがいなかったら私はここまで来られなかった。
お父さんの事も、ずっとずっと何も知らずに生きていただろう。
感謝の気持ちでいっぱいな私。
……でも。
彼は、少し気まずそうに苦笑いして顔を背ける。
「?……バロン?」
なんか様子がおかしい。
ひょっとして、まだ具合が良くないのかと心配になった。
「大丈夫?
あ、お水飲む?」
「……。
ヴァロンみたいに、出来なかったけどね」
!……え?
バロンの言葉に、私は棚の水に伸ばしかけていた手を止めた。