夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

……そして。
1番に、バロンの事を聞かれた。


「ここへ来たら、バロンの制服が警備のものに変わっていて……。
まさかと思ってローザに聞きましたのよ?
アカリが、決めたんですって?」

「……。うん」

モニカの問い掛けに私は頷いて、編みかけの編み物を机に置いた。


「どうして?
なんでそんな事をっ……」

納得のいかない表情を浮かべながら、私を見つめるモニカ。


私はゆっくりと話し始めた。
あの時の事を思い出すように……。

それはーー。
私がお父さんの事を求めて別荘を抜け出して、その旅から帰って来た時の事だ。


『このままアカリを、あの場所に帰したくなくなる』

嬉しかったあの言葉。


でも、私は……。
私達は、ここへ戻って来る事を選んだ。


どちらかが、特に言葉にした訳じゃない。

暫く見つめ合った私とバロンは、二人で少し微笑んで……。互いに、目を逸らした。
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