夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
……
………。
「焼けたわ!
アカリ、これならどう?」
ちょうどおやつの時間頃。
厨房に香るフワッとした甘い匂い。
何度も何度も失敗を繰り返して、ようやく自信作の出来たモニカは、笑顔で私に焼き上がったお菓子を差し出す。
「すごい!
モニカ、頑張ったね!」
初心者とは思えない上出来。
彼女が作ったマフィンケーキは焼き色も良くて、本当に美味しそうに膨らんでいた。
今まで”お嬢様”として育ってきたから触れてこなかっただけで、実はモニカには料理の才能があるのかも知れない。
そんな事を思いながら後片付けをしていると、褒められて上機嫌の彼女がエプロンを外して言った。
「よし!
じゃあ、早速試食してもらいますわ!」
「?……誰に?」
てっきり二人で試食を兼ねたお茶をすると思っていた私は、モニカの「試食してもらう」という言葉と、大皿にマフィンを並べる行動に首を傾げる。
「いいから!
アカリもそのクッキー持って行きますわよ!」
「モ、モニカ?待って!」
行く、って何処に??
彼女に促されて私も慌ててエプロンを外すと、仕上げたクッキーを大皿に盛って厨房を後にした。