夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

「へぇ、美味しそうですね。
頂いてもよろしいですか?」

「どうぞ!私、初めて作ったんですの!」

耳に届く、バロンとモニカの会話。
それは挨拶以外で、久々に聞く彼の声だった。

バロンが、近くにいる。
五感の全てが聴覚に集まったみたいに、私は自然と彼の声を聴いていた。


「どう?バロン?」

「とっても美味しいです。
初めて作ったとは思えませんね」

モニカの作ったお菓子を食べて、嬉しそうに褒めるバロンの声。


っ……胸が痛い。

聞きたくない。
彼が別の女性の事を褒める言葉なんて聞きたくなくて、私はすぐにこの場から逃げ出したくなった。


ーーでも。


「……こちらも頂いても、よろしいですか?」

震える脚で後ろに下がろうとした私を、頭上から響いた優しいバロンの声が止めた。
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