夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
「こ、これっ!
全部、みなさんで……食べて下さいっ!」
クッキーの乗ったお皿を休憩場にあったテーブルに置くと、私は俯いたままその場を走り去った。
「!……あ、アカリ!」
背後から私を呼ぶモニカの声が聞こえたけど、立ち止まる事は出来なかった。
無理だよっ……。
こんな表情、誰にも見せられない!!
バロンの言葉が嬉しくて、顔が真っ赤になっている自分。
バロンの言葉が切なくて、涙でぐしゃぐしゃになっている自分をーー。
私は自分の部屋に入ると、バタンッ!と扉を閉めて床に座り込んだ。
『お嬢様のクッキーが1番ですね』
彼の顔を見ていたら、きっと私は喜びのあまり飛び付いていた。
「……。
私もバロンが褒めてくれるのが、1番嬉しいよっ」
やっと口から出た本音をポツリと呟いて、戻れないあの日を思い出す。
勉強、お稽古事……。
私の頑張りの元は、すべてバロンに褒めてほしかったからだった。……と。