夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

「名家の令嬢は、欲しい物が何でも手に入る。
アカリもここに来るまではそう思っていたでしょう?
……でも、実際は違う。
本当に欲しいものが手に入らないのは、誰でも同じなのよね」

そう言ったモニカは、いつもと全く違う。
すごく大人に見えて、切ないくらいに綺麗だった。


「だから……。だから、ね。
欲しいものは、一瞬でも逃しては駄目なの。
我が儘を言ってでも、手に入れなきゃ駄目」

「……っ」

モニカの姿と言葉が、痛くて痛くて堪らない。
耐え切れず、私はまた逃げ出そうとした。

するとーー。
「それじゃ駄目!」と教えてくれるみたいに、モニカは突然キッと睨むように私を見つめると、詰め寄って肩を掴む。


「何をウジウジしているのっ?
自分が1番不幸みたいな表情しないでッ!
アカリは出逢えたのよ?大切な人に!
今を手放したら、この先私達に自由なんて永遠に来ないの!」

私の肩を掴むその手は微かに震えていて、私に向けられた瞳には、今にも溢れそうな涙。
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