夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

どうしよう……っ。

このまま捕らえられてアルバート様に報告がいけば、きっと彼は無事では済まない。
処分されてしまうかも知れない。


「やっと追い詰めたぞ!
その髪と瞳の色、どこの国の者だ!」

ビシッとした紺色の制服に身を包んだ警備長が、その逞しい体格通りの太い声を響かせる。
不法進入者に加え珍しい容姿の彼に、警備長達は必要以上に警戒している様子だ。


っ……助けなきゃ!

私の力で、どうにか出来る問題ではないかも知れない。
それでも居ても立っても居られなくて、この騒動を鎮めようと思った。


でも、声を上げかけた瞬間。
たくさんの人に囲まれている彼がチラッとこっちを見て、私に微笑む。


ーーえっ?

瞳が重なって、ドキンッと胸が高鳴った。
トクンットクンッと温かい鼓動が、身体に響き渡る。
それなのに騒いでいた心は冷静になって、喉まできていた叫びが消えていく。
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