夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

「お嬢様は、とてもご両親に愛されていたんですね」

「……えっ?」

何故、そこで私が出てくるんだろう?
その言葉に首を傾げると、彼は私の手の上の宝石箱を見つめながら、両親の……。

いや、私達家族の絆を教えてくれる。


「その曲名は、明るい里と書いて”明里”。
お嬢様の名前は、そこから付けられたんだと思いますよ」

「!……私の、名前?」

初めて知った、自分の名前の由来。
驚きを隠せず、私はバロンと宝石箱を交互に見つめた。


「ご両親の想い出が、お嬢様の名前に込められている。
そしてそれをお父様が贈って、それをお母様が大切になさっていた。
何よりも、ご両親の深い愛だと思います」

不思議だった。
バロンにそう言われたら、なんだか見えた気がした。

お父さんとお母さんが、幸せそうに微笑む姿が私の頭に浮かんだ。

何も、覚えていない筈だったのに……。
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