夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
なんだか普段よりも男の色気を漂わせたバロンから目を逸らせないでいると、彼の開いた眼差しが私も、心も射抜くーー。
「あんたが、願う必要ない。
僕が自ら、アカリの傍に戻りたいと願う」
「っ……バロンッ」
”アカリ”……。
ずっとずっと聞きたかった。
貴方の声で、名前を呼んでほしかった。
それだけで、私の心臓が幸せだって叫んでる。
嬉しいのに視界が涙でボヤけて、バロンの顔がよく見えない。
「……泣き虫だな。アカリは」
溜め息混じりな優しい声が聞こえたかと思うと、バロンは羽織らせてくれたコートで私の顔が見えないように包み込んで……。
ギュッと、自分の胸に抱いてくれた。
「っ……」
彼の胸板に密着した頬から感じる、体温と鼓動と感触。
驚きのあまりに涙はピタッと止まる。