夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
まだこの場の状況は変わっていない。
なのに、何故だか私は落ち着いてしまっていた。
ただただ、白金色の瞳に魅せられて、逸らす事が出来ない。
すると。
じっと見つめる私に、彼は人差し指を自分の口元に当ててみせた。
まるで”黙っていろ”と言うように、「し~っ」という仕草だ。
そして……。
彼の唇が、声を発しないけど小さく動く。
だ、い、じょ、う、ぶ。
……大丈夫……?
私が彼の唇を読んだ直後。
「捕らえろ……!!」
警備長の命が響いて、部下達が彼を捕らえようと次々に襲いかかった。
アルバート様が自ら面接して、厳しい特殊な訓練も受けてきた警備達。
警備長を始め、みんな格闘技の有段者だと聞いている。
ーーしかし、なんという事だろう。
彼はその警備達を、次々に捌いていく。
警備達の攻撃を交わし、受け止め、軽やかに身を翻す。
まるで舞を舞っているような、その美しい姿。
有能な警備達が、たった一人の彼を捕まえられない。