夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

「全部、丁重にお断りしたよ。
渡されたけど、受け取ってない。だから、ノーカウントでしょ?」

「……な、なんで?お菓子、好きでしょ?」

優しいバロンの言葉とその対応が嬉しいのに、まだ素直になれない私は意地悪な質問をしてしまう。

そんな私に、何処に隠し持っていたのか……。
彼がパッと、一輪の赤いバラを差し出した。


「僕の育った地方では、今日は男性が女性に花を贈る日なんだよね。
……だから、はい。アカリにあげる」

「え……?」

わ、私に……くれる、って……。
それって……?


ーー聞いた事がある。

別の地方では、男性が女性に花を贈って想いを伝えるって……。
好きな人に、愛を告白する日だって。


好きな、人。
バロンがこのバラを贈ってくれた意味に気付いて、私の胸にホワッと咲く感情。

もう意地とか嫉妬とか、嘘みたいに消えちゃった。
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